ASTM F606 / F606M —— ねじ部品の機械的性質は実際どう測られているのか
成績書に F606 とある。ボルトに何がされたのかを説明します。長さの変化で判定する保証荷重、頭部を偏心させて引くくさび引張、機械加工試験片、マンドレル上でのナット保証荷重、そして硬さをどの位置で読むか。
| 関連サービス | 試験ラボ |
|---|---|
| 試験・測定 | ASTM F606 / F606M |
| 別の表記 | ASTM F606 (inch series), ASTM F606M (metric series), ASTM F606/F606M (combined designation), ASTM E8 / E8M (machined specimens), SAE J429 (inch property values), ASTM A563 (nut property values), ASTM F3125 (structural bolting), ASTM F436 (hardened washers), ISO 898-1 (metric system, methods included) |
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適用範囲 — および対象外の事項
ASTM F606 / F606M は試験方法の規格です。おねじ部品・めねじ部品・座金・張力指示座金・リベットの機械的性質をどう測るかを試験所に指示します —— 保証荷重、くさび引張と軸方向引張、部品から削り出した試験片の引張、焼入れマンドレル上でのナット保証荷重試験、硬さとその読み取り位置。性能値そのものは一切定めません。grade 5 のボルトやあるナット区分が満たすべき値は製品規格(SAE J429、ASTM A563、ASTM F3125、ASTM F436)に書かれており、それらの文書が測り方として F606 を引用します。インチ系とメートル系の要求は現在 F606/F606M の一つの番号にまとめられ、古い図面では F606(インチ)と F606M(メートル)が別々に引用されています。寸法(ASME B18 シリーズ)、表面処理、腐食試験、水素脆化の検出(ASTM F1940、ASTM F1624、ISO 15330)は対象外です。
規格は著作権のある文書です。当社は範囲・意図・実務上の適用を自らの言葉で説明しています。最新版は ISO、ASTM、DIN または各国の規格機関から入手してください。
生産で実際に効いてくる条項
- 1「値」と「測り方」を分けたことが、この番号の存在理由そのものです。インチ系では区分が一方の文書に、その証明方法がもう一方の文書にあるため、正しいインチ系成績書には両方の番号が載ります。ISO のメートル系は逆で、ISO 898-1 が自前の試験附属書を持つため、成績書に別の試験方法番号が出ることはほとんどありません。
- 2保証荷重は引張破断試験ではありません。長さを測り、保証荷重まで一度だけ負荷し、短時間保持して除荷し、もう一度測る —— 元の長さに戻っていれば合格です。二回の測定値に許される差は測定誤差を吸収するためのもので、わずかな永久伸びを認めるものではありません。長さ測定による Method 1 は、二つの試験所の結果が食い違ったときの裁定手順です。
- 3くさび引張は頭部をわざと偏心させて引きます。座面の下に焼入れくさびを入れて頭部を軸部に対して曲げるので、この試験が問うのはねじの強さだけでなく、頭部と軸部のつなぎ目と延性です。まっすぐ引けば耐える部品でも、くさびでは頭が飛ぶことがあり、規格が見たいのはまさにその情報です。
- 4実物大の結果と機械加工試験片の結果は、同じ種類の証拠ではありません。ボルトから試験片を削り出すと、ねじ底と首下の丸みという、ねじ部品が実際に壊れる二か所が取り除かれます。したがって試験片が語るのは「鋼そのもの」であって完成品ではありません。試験機の能力を超える場合や形状的に実物大で引けない場合の代替であり、断面のどの位置から試験片を採るかも規格が定めています。
- 5ここでの硬さは「位置」の話であり、スケールや試験力の話ではありません(それは ISO 6507 / ISO 6508 の領分です)。製品試験ではねじ部の横断面を先端から規定の距離で切り、半径の中央で読むことが求められます。こうして得た値はねじの芯部を語り、二面幅の表面や脱炭層を語りません。また、短くて掴めない部品は硬さで試験する —— これは規格自身の規定であり、試験所の手抜きではありません。
- 6めねじ部品と座金はさらに別扱いです。ナットは焼入れしたねじマンドレルにねじ込んで軸方向に負荷し、ねじ山のせん断も破裂も起こしてはならず、除荷後に手で外せることが条件です。マンドレルのねじが損傷した場合、その試験は不合格ではなく無効になります。焼入れ座金はコーン保証荷重で証明します。つまり「F606 で試験」は座金の行とボルトの行で意味が違います。
参照表
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この試験方法が実際に決めていること
| 項目 | 参考値 |
|---|---|
| 保証荷重の裁定手順 —— 長さを測り、一度だけ負荷し、再び測る | Method 1 |
| 除荷前に保証荷重を保持する時間 | 10 s |
| 前後の長さ測定値に許される差 —— 測定誤差の許容であり、許された伸びではない | 0.0005 in. (0.013 mm) |
| 選定表が用いるくさび角の組(製品・区分・呼び径で選ぶ) | 4° / 6° / 10° |
| 横断面での硬さ測定位置:ねじ先端からの距離、半径の中央で読む | 1 d |
| 機械加工試験片の引張は金属材料の一般引張試験方法による | ASTM E8 / E8M |
参考値であり、実際は現行版と製品規格が支配します。くさび角は実際の製品・区分・呼び径で表から読む値で、単一の数値ではありません。短いボルトや、頭部下の丸みまでねじが達している場合は別の行になります。
値を決める文書と、測り方を決める文書
| 購入対象 | 値を決める文書 | 測り方を決める文書 |
|---|---|---|
| インチ系ボルト・ねじ・スタッド | SAE J429 | ASTM F606 / F606M |
| インチ系ナット | ASTM A563 | ASTM F606 / F606M |
| 構造用ボルト(旧 A325 / A490) | ASTM F3125 | ASTM F606 / F606M |
| 焼入れ座金 | ASTM F436 | ASTM F606 / F606M |
| メートル系ボルト・ねじ・スタッド | ISO 898-1 | ISO 898-1 (annexes) · ISO 6892-1 |
| メートル系ナット | ISO 898-2 | ISO 898-2 (annexes) |
インチ系はこの二つを別々の文書に分けているため、成績書には区分と試験方法番号の両方が載ります。ISO のメートル系は試験方法を性能規格の中に持つので、成績書は ISO 898-1 か ISO 898-2 だけを引用するのが普通です。
本ページの数値は、部品・皮膜システム・適用仕様に依存する代表的な業界値であり、保証値ではありません。必ず有効版と客先図面で確認してください。本ページはそのいずれにも代わりません。
図面・注文書に書くべきこと
- 製品規格と試験方法を必ず並べて書く —— 「SAE J429 grade 5、機械的性質は ASTM F606/F606M による」。方法番号だけでは何も指定していません。F606 には合否の値が一つも入っていないからです。
- ロットごとにどの試験を何本行うか:保証荷重、くさび引張、軸方向引張、硬さ。ナットなら保証荷重と硬さ、座金ならコーン保証荷重。
- 実物大で試験するのか機械加工試験片で試験するのか、そしてその置き換えを誰が決めてよいのか。書かなければ、試験機を持っている側が決めることになります。
- めっき・ベーキングの前に試験するのか後に試験するのか。めっきしたねじと素地のねじは治具の中で同じ挙動をしません。表の既定値以外のくさび角を意図するなら、その角度を明記します。
- 硬さをどこで読み何本測るか、成績書を発行する試験所、そして成績書に製品規格だけでなく F606 の版年も記載させるかどうか。
引用が曖昧なときに起きること
- 「ASTM F606 による試験」だけを要求として書くこと。区分も寸法範囲も抜取り数もなければ見積もれず受入検査もできず、二社から根拠のある別々の数値が返ってきます。
- 保証荷重の合格を強度の数値として読むこと。それはその荷重で測定できる永久変形が出なかったという意味であり、最終的に何 kN で壊れるかは何も語っていません。
- 実物大のくさび引張要求に対して機械加工試験片の引張データを出すこと。試験片は首下の丸みで壊れようがありません。その部分は削り落とされているからです。
- めっきした高強度部品では両方の話題が同時に出るため、F606 が水素脆化も見ていると思い込むこと。見ていません。それは ISO 15330 や ASTM F1940 / F1624 とベーキング記録の領分です。
よくあるご質問
成績書に ASTM F606 とあります。私のボルトには何が行われたのですか。+
この番号は「手順」なので、区分と一緒に読んでください。実務としては、ロットから抜き取った試料に保証荷重を一度かけ、前後の長さを測って永久変形を判定し、破断まで引き(規格が求めていればくさびを介して頭部を偏心させて)、規定位置で横断面を切って硬さを測ります。成績書の数値は F606 ではなく製品規格と照合されます。
ASTM F606 は ISO 898-1 と同じものですか。+
違いますし、競合するものでもありません。ISO 898-1 は性能規格で、その中に試験附属書を併せ持っています。F606 は方法だけの規格で、インチ系の性能規格に奉仕するために書かれ、メートル系の手順も併載しています。図面がメートル系で ISO 898-1 を引用しているなら、F606 を重ねて引用する必要はありません。試験方法はすでに引用済みの文書の中にあります。
V.S. Heat Treatment は F606 の試験を実施できますか。+
当社の社内試験室が扱うのは硬さ、有効硬化層深さ、皮膜厚さ、塩水噴霧です。このうち硬さは F606 系の試験として生産ロットに毎日行っています。保証荷重・くさび引張・機械加工試験片の引張には校正済みの引張試験機と専用治具が必要なため、設備の整った試験所で実施し、通常は完成品ねじの規格を持つ側が手配します。ご注文にこれらが必要な場合は見積り時にお知らせください。工程ルートと記録を成績書に耐えるように組みます。当社が保有する認証は ISO 9001:2015 のみで、これは品質マネジメントの認証であり、いずれかの試験規格に対する試験所認定ではありません。
本ページの数値は、部品・皮膜システム・適用仕様に依存する代表的な業界値であり、保証値ではありません。必ず有効版と客先図面で確認してください。本ページはそのいずれにも代わりません。
関連規格
本リファレンス内の他の規格
図面をお送りください。本規格と突き合わせて確認します
現状の図面または仕様の記載、強度区分やめっき要求、ねじ寸法と公差域、可能であれば実物をお送りください。記載どおりに加工できる項目、そのねじでは計算上成立しない項目、そして要求が見積・検査・説明可能になるために追記が必要な項目をお伝えします。
お見積り依頼には 24 時間以内に返信します。