SCM440(42CrMo4 / AISI 4140)— 硬さ、焼戻し、焼割れ感受性
SCM440 と SCM435 の実務上の違い。炭素が多く強度は高いが焼割れに敏感で、Cr–Mo 鋼で避けるべき焼戻し温度域があります。
材質データ
| JIS 記号 | SCM440 |
|---|---|
| 相当材 | AISI 4140 / DIN 42CrMo4 |
| 炭素量 (%) | 0.38–0.43 |
| 鋼種分類 | 合金鋼(Cr / Cr–Mo) |
| 熱処理ルート | 焼入れ・焼戻し |
| 代表的な表面硬さ (HRC) | 50–58 HRC |
| 実使用で指定される硬さ (HRC) | 28–48 HRC |
| 熱処理で硬化できるか | 可 |
硬さの数値は当社が扱う小物部品における代表的な業界範囲であり、部品形状、断面寸法、焼入れ方法、適用規格によって変わります。保証値ではなく、お客様の図面や規格に代わるものでもありません。
最終確認:
どんな鋼か
SCM440 は炭素を高めた SCM435 です。到達強度と耐摩耗性が上がる代わりに、焼割れに対する余裕が減ります。SCM435 なら耐えた同じ隅 R が、この材質では耐えないことがあります。普通炭素鋼では焼きの入らない断面で、ピンやボルトを硬く強くしたいときの材質です。
熱処理の方法
油焼入れの調質で、指定の区分または硬さへ焼き戻します。炭素が多いほど焼入れ組織が抱える応力は大きく、形状が効いてきます。鋭い角、交差穴、急な断面変化が割れの起点であり、機械加工部品では焼入れ前の応力除去が安い保険になります。
めっきと水素脆性
通常使われる強度域では ISO 4042 のしきい値以上であり、電気めっき品はめっき後できるだけ早くベーキングします。納入強度が高いほど仕様が求めるベーキング時間は長くなり、遅れに対する許容も小さくなります。
電気めっき後にベーキングが必要
ISO 4042 は、電気めっきした締結部品について強度区分 10.9 以上、または約 390 HV(≈ 40 HRC)以上でベーキング(水素除去)を求めています。顧客仕様がより低いしきい値を定める例も多く、判断するのは図面であって本ページではありません。
水素脆性除去ベーキング計画ツール選ぶべき場面
高張力ボルト、ダウエルピンやクレビスピン、締結アセンブリ内の小径軸などで、SCM435 では厳しい断面に 10.9・12.9 が求められる場合、あるいは耐摩耗性も要求に含まれる場合に選びます。
選ぶべきでない場面
8.8 で足りる場合は選ばないでください。薄物の冷間圧造ねじにも不向きで、炭素が増える分だけ圧造が難しくなるだけです。高温焼戻し後に Cr–Mo 鋼の焼戻し脆化域をゆっくり冷やすことも避けてください。そうして脆化したロットは廃棄しかありません。
この材質で起きやすい不具合
よくあるご質問
SCM435 と SCM440 はどちらを選ぶべきですか。+
冷間圧造の高張力締結部品で成形性と割れにくさを重視するなら SCM435、断面が重い場合や硬さ・耐摩耗性が要求に含まれる場合は SCM440 です。硬さ範囲は重なっており、実務上の違いは焼入性と焼割れ感受性であって表の見出しの数字ではありません。
SCM440 の部品が焼入れで割れたのはなぜですか。+
この材質で多い原因は炉ではなく形状と時間です。鋭い内角、R のない断面変化、ねじ底近くの交差穴、焼入れ後に焼戻しまで放置した時間などです。割れ位置を示した図面をお送りいただければ、多くは形状から説明できます。