SUS420J2(AISI 420 / X30Cr13)— 実際に焼入れできるステンレス
マルテンサイト系ステンレス SUS420J2 の焼入れ・焼戻し、焼戻し温度が硬さと耐食性を同時に決める理由、亜鉛めっきが通常は誤った選択である理由。
材質データ
| JIS 記号 | SUS420J2 |
|---|---|
| 相当材 | AISI 420 / DIN X30Cr13 |
| 炭素量 (%) | 0.26–0.40 |
| 鋼種分類 | ステンレス鋼 |
| 熱処理ルート | 焼入れ・焼戻し |
| 代表的な表面硬さ (HRC) | 48–55 HRC |
| 実使用で指定される硬さ (HRC) | 45–52 HRC |
| 熱処理で硬化できるか | 可 |
硬さの数値は当社が扱う小物部品における代表的な業界範囲であり、部品形状、断面寸法、焼入れ方法、適用規格によって変わります。保証値ではなく、お客様の図面や規格に代わるものでもありません。
最終確認:
どんな鋼か
SUS420J2 はマルテンサイト系ステンレス鋼で、オーステナイト系と違って熱処理で硬化する系統です。クロム約 13% による耐食性は SUS304 より大幅に低く、その耐食性はクロムが固溶したままであるかどうか、つまりどう熱処理し、その後に不動態化したかに依存します。
熱処理の方法
焼入れ後に焼戻します。焼戻し温度は硬さのつまみではなく材料上の判断です。低温焼戻しは硬さと耐食性を保ち、中間域での焼戻しは炭化物析出により靭性と耐食性の両方を損ない、高温焼戻しは靭性を戻す代わりにこの材質を選んだ理由である硬さを手放します。焼入れ後の徐冷も、誤った焼戻しと同じ損傷を与えます。
めっきと水素脆性
ステンレス部品への亜鉛めっきは、ステンレスを指定した理由そのものを否定します。ここでは正解になることはほとんどなく、正しいのは加工と熱処理の後の不動態化です。酸洗や電解工程が避けられない場合、マルテンサイト系ステンレスはオーステナイト系と違って水素脆性に確かに敏感であり、この硬さは ISO 4042 のしきい値以上であることを忘れないでください。
電気めっき後にベーキングが必要
ISO 4042 は、電気めっきした締結部品について強度区分 10.9 以上、または約 390 HV(≈ 40 HRC)以上でベーキング(水素除去)を求めています。顧客仕様がより低いしきい値を定める例も多く、判断するのは図面であって本ページではありません。
水素脆性除去ベーキング計画ツール代表的な ISO 898-1 強度区分
選ぶべき場面
硬化と耐食性の両方が必要な部品に選びます。耐摩耗性が必要なステンレスねじやピン、切れ刃や成形刃、湿潤環境で使う小物部品です。
選ぶべきでない場面
SUS304 並みの耐食性が必要な場合は選ばないでください。焼入れ状態のクロム 13% は妥協であり、304 が平然としている環境で錆びます。溶接構造にも使わず、都合のよい温度で自由に焼き戻せると考えないでください。
この材質で起きやすい不具合
よくあるご質問
SUS420J2 の耐食性は SUS304 と同等ですか。+
同等ではなく、差は小さくありません。これは硬さのために選ぶ、実用的な耐食性を備えた焼入れ可能なステンレスであり、最大の耐食性のための材質ではありません。両者の選択は、必要な性能がどちらかを選ぶことです。
マルテンサイト系ステンレスにベーキングは必要ですか。+
焼入れ状態で酸洗や電解工程を通ったなら、感受性があるものとして扱ってください。マルテンサイト系はオーステナイト系 304 のような免疫を持たず、この硬さは ISO 4042 のしきい値以上です。要求は仕様が定めます。