SWCH10B21(10B21)— 区分 8.8 向けボロン冷間圧造用鋼
ボロンが低炭素でも焼入性を生む仕組み、固溶ボロンがすべてである理由、そして 10B21 が熱処理締結部品に適さなくなる境界。
材質データ
| JIS 記号 | SWCH10B21 |
|---|---|
| 相当材 | AISI 10B21 |
| 炭素量 (%) | 0.18–0.23 + B |
| 鋼種分類 | ボロン冷間圧造用鋼 |
| 熱処理ルート | 焼入れ・焼戻し |
| 代表的な表面硬さ (HRC) | 40–48 HRC |
| 実使用で指定される硬さ (HRC) | 28–40 HRC |
| 熱処理で硬化できるか | 可 |
硬さの数値は当社が扱う小物部品における代表的な業界範囲であり、部品形状、断面寸法、焼入れ方法、適用規格によって変わります。保証値ではなく、お客様の図面や規格に代わるものでもありません。
最終確認:
どんな鋼か
SWCH10B21 は数 ppm のボロンを添加した低炭素冷間圧造用鋼です。この微量が実際に働きます。ボロンが結晶粒界に偏析してフェライト生成を遅らせるため、冷間圧造できるほど軟らかい鋼でも焼入れに反応します。膨大な数の区分 8.8 冷間圧造ねじ・ボルトを支える量産材です。
熱処理の方法
焼入れ・焼戻しです。要点は固溶ボロンだけが効くことです。鋼中の窒素がボロンを固定してしまうと焼入性の効果は消え、炉のチャートは正常なのに部品だけが軟らかく仕上がります。これは製鋼とミルシートの問題であり、ボロン鋼で説明のつかない軟らかいロットが出たら、最初に見るのは炉ではなくミルシートです。
めっきと水素脆性
区分 8.8 では ISO 4042 のしきい値未満で、通常ベーキングは不要ですが、決めるのは図面です。区分にかかわらず電気めっきした締結部品すべてにベーキングを要求するお客様もあり、それはお客様の判断です。
通常は不要
ISO 4042 は、電気めっきした締結部品について強度区分 10.9 以上、または約 390 HV(≈ 40 HRC)以上でベーキング(水素除去)を求めています。顧客仕様がより低いしきい値を定める例も多く、判断するのは図面であって本ページではありません。
水素脆性除去ベーキング計画ツール代表的な ISO 898-1 強度区分
選ぶべき場面
小径・大量生産で、千本あたりのコストが決め手になる区分 8.8 の冷間圧造締結部品に選びます。
選ぶべきでない場面
10.9 や 12.9 には選ばないでください。炭素が足りません。厚い断面、室温より明確に高い温度での使用も不向きで、その領域ではボロン鋼の優位が失われます。何度もオーステナイト化を繰り返す部品にも向きません。
この材質で起きやすい不具合
よくあるご質問
ボロン鋼のロットが軟らかく上がったのはなぜですか。+
ボロン鋼では最初に疑うのは炉ではなく鋼材です。ボロンが窒化物として固定されていれば、使える焼入性効果がありません。熱処理をやり直す前に、ミルシートのボロン、窒素、チタンを確認してください。
10B21 と SCM435 のどちらを使うべきですか。+
冷間圧造寸法の区分 8.8 なら 10B21、10.9 や 12.9 なら SCM435 です。8.8 の部品に合金鋼を選ぶのは、コストを増やしたうえにベーキングで管理すべき脆化リスクまで抱え込むことになります。