脱炭 — 熱処理による表層の炭素損失
焼入れねじ・ボルトの軟らかい表層:全脱炭と部分脱炭がなぜ ISO 898-1 に適合しないか、金属組織断面と微小硬さ測定による判定、そして炉内雰囲気の管理方法。
| 不具合区分 | 熱処理 |
|---|---|
| 関連サービス | 熱処理 |
| 確認日 |
よく引用される規格
現象
芯部の硬さは規格内なのに表層が低い — 頭部で測れば合格のボルトでも、ねじ山頂にやすりが食い込む。規定トルクでねじがかじる、なめる、山がつぶれる。タッピンねじが切り込まなくなり、めっき後の外観がくすむ・まだらになる。研磨・腐食した断面では、ねじフランクに淡いフェライト主体の縁層が見え、内部のマルテンサイトのように暗くなりません。
確認方法
ねじを軸方向に切断し、樹脂埋め・研磨・腐食して ISO 898-1 と照合します。表面が完全にフェライトの層(全脱炭、G)は許容されず、健全部の高さ E は当該強度区分の最小値以上でなければなりません。認められている方法は二つ — 規定位置のねじフランクの金属組織検査と、ISO 6507-1 / ASTM E384 による表面から内部への微小硬さ測定(表層近傍と基準深さの比較)です。ISO 3887 と ASTM E1077 が一般的な測定を規定しています。必ずねじで測定してください。測りやすい平面ではなく、炭素が抜けるのも荷重を受けるのもねじだからです。
関連する計算ツール: 鋼種別 硬さ早見表原因 — 頻度の高い順
- 1炉内雰囲気のカーボンポテンシャルが鋼の炭素量より低く、大気または保護が不十分な雰囲気がオーステナイト化温度で炭素を奪う。
- 2高温保持が長すぎる — 影響深さはおよそ時間の平方根で増えるため、「確実に焼きを入れる」ために遅く流した満載のメッシュベルトは、確実に脱炭もさせます。
- 3漏れと希釈:扉カーテンの摩耗、ガス流量不足、露点の不安定、装入側からの空気侵入。
- 4受入線材がすでに脱炭している — 熱間圧延、パテンティング、球状化焼なましで失われた表層は、冷間圧造では取り除けません。
- 5荷重面の取り代がない:熱処理前に転造したねじは、影響層を荷重フランクに残したままになります。
- 6予熱中に焼き付いたスケールと錆 — 炭素を消費しつつ、断面を切るまで症状を隠します。
再発を防ぐ工程管理
- 制御された保護雰囲気を用い、鋼種に合わせてカーボンポテンシャルを設定し、露点・酸素プローブ・シムストックで検証する(制御盤の設定値を信用しない)。
- 高温保持は断面が本当に必要とする時間だけにする — 小物締結部品はすぐに焼きが入り、長時間保持はスケールと脱炭しか生みません。
- 圧造前に受入線材の脱炭を検査する。限度を明記したミルシートと切断サンプル 1 個で、問題を工場の外で止められます。
- 設計が許すなら熱処理後に転造するか、研削代を残して影響層を荷重面から除去する。
- 10.9・12.9 の焼入れ品はロット出荷判定にねじ断面検査を入れ、表面硬さ 1 点に頼らない。
- シール・カーテン・ガス流量を保守し記録を残す — 脱炭事例は保守作業の前後に集中します。
診断のためにお送りいただくもの
- 疑いのあるロットから 6〜10 個(可能ならバレル研磨・めっき前)、および合格ロットの同型品。
- 図面と強度区分、材質、線材のミルシート(あれば)。
- 低い硬さをどこで測定したか — 頭部・軸部・ねじ山頂・フランク — と、方法・スケール・荷重。
お見積り依頼には 24 時間以内に返信します。
技術者からよくある質問
脱炭は必ず熱処理の誤りですか。+
いいえ。相当数は線材とともに入荷します。圧延や焼なましで失われた炭素は圧造後も欠けたままで、短時間の焼入れサイクルで戻ることはありません。受入状態のサンプルを断面観察すれば二つの原因を切り分けられ、責任の所在も判断できます。
脱炭は元に戻せますか。+
完成した締結部品では実務上戻せません。炭素を戻すには浸炭サイクルが必要で、寸法も芯部特性も変わってしまい、材料価値に見合いません。受入検査と雰囲気管理が経済的な対策です。
使用時にはどう現れますか。+
ねじのなめり・山つぶれ、トルク—軸力が目標に届かない、ねじ谷底起点の早期疲労割れとして現れます。軟らかい表層が先に降伏し、より少ない噛み合いねじに荷重を移すためです。
公開規格と一般的な締結部品冶金学に基づく解説です。記載値は代表的な範囲であり、部品・材質・適用仕様によって変わります。お客様の図面と適用規格が常に優先します。本ページは実部品の破損解析に代わるものではありません。