焼割れ
焼入れ後に現れる鋭く酸化のない割れ:磁粉・浸透探傷と断面観察で焼割れを鍛造疵や水素割れと区別する方法、そして焼入れ・焼戻しの管理点。
| 不具合区分 | 熱処理 |
|---|---|
| 関連サービス | 熱処理 |
| 確認日 |
よく引用される規格
現象
焼入れ後に現れる直線状またはわずかに湾曲した割れ — 首下、軸部、頭部の穴まわり、ねじ谷底、ナット角部の放射状割れなど。口が開き先端が鋭く、めっき後は液がにじむ黒い線として見えることが多い。打音が鈍くなることもあり、不良ロットでは複数の部品が同じ幾何位置で割れます。
確認方法
ISO 9934-1 / ASTM E1444 の磁粉探傷、または ISO 3452-1 / ASTM E165 の浸透探傷で割れを検出し、断面観察で機構を特定します。本来の焼割れは表面から内部へ、旧オーステナイト粒界に沿って進み、枝分かれせず、割れ側面に酸化層も脱炭層もありません(部品が炉を出た後に開いたため)。鍛造疵は先端が丸く、側面が酸化・脱炭しています。水素割れは焼入れ後ではなくめっき後に現れます。割れ近傍の組織と硬さも同時に確認します。未焼戻しマルテンサイトが典型的な随伴特徴です。
関連する計算ツール: 鋼種別 硬さ早見表原因 — 頻度の高い順
- 1焼入れの厳しさが鋼種に合っていない — 油で十分な合金鋼・高炭素鋼に水や食塩水を使用。
- 2焼戻しの遅れ・欠落:未焼戻しのマルテンサイトは一晩置くだけで自然に割れます。焼戻しは焼入れ直後でなければなりません。
- 3オーステナイト化温度が高い・時間が長い — 粒が粗大化し Ms が下がり、変態応力がより脆い組織に加わります。
- 4形状と応力集中 — 鋭い首下、面取りのない穴角部、急な断面変化、深い金型痕、高応力部への刻印。
- 5許容範囲上限の炭素量・焼入れ性 — 先月は問題なかった同じサイクルでも割れリスクが大きく上がります。
- 6焼入れ槽への入り方が不均一:部品同士の入れ子、攪拌むら、焼入油の過熱・水分混入・汚染による局所的な冷却速度差。
再発を防ぐ工程管理
- 焼入媒体と攪拌を鋼種と断面に合わせ、油の状態(温度・水分・汚染)を管理する — いずれも冷却曲線を変えます。
- 焼入れ後は直ちに焼戻し、「焼入れ〜焼戻し」の間隔を上限つきの管理パラメータとして記録する。
- オーステナイト化温度と時間は断面が必要とする最小限にする。小物締結部品に長い保持はほとんど不要です。
- 割れが繰り返す部位は形状を直す — 首下にRを付ける、穴角部のバリを取る、刻印を高応力部から移す。
- バスケットは部品が入れ子・遮蔽しないように積み、ロット間で積載密度を一定に保つ。
- 割れやすい鋼種では初品と各ロットの抜取りを磁粉・浸透探傷で確認する(客先で見つかるのを待たない)。
診断のためにお送りいただくもの
- 発見時のまま洗浄していない割れ品。めっき済みなら同一ロットの未めっき品も併せて。
- 鋼種、図面、部品上の正確な割れ位置 — 印を付けた写真で十分です。
- 熱処理ルート:オーステナイト化温度と時間、焼入媒体とその温度、焼戻しまでの間隔。
お見積り依頼には 24 時間以内に返信します。
技術者からよくある質問
焼割れは補修できますか。+
できません。焼入れ材の貫通した分離であり、焼戻しでもめっきでも塞がりません。磁粉または浸透探傷でロットを選別し、割れ品は廃棄します。
なぜめっき後に割れが見えたのですか。+
めっきは原因ではなく可視化です。酸洗が割れを開いて側面を洗い、光沢皮膜が線を目立たせます。断面観察で決着します。焼割れは側面に酸化がなくめっき前から存在し、水素割れは粒界破面でめっき後の数時間〜数日に現れます。
どの締結部品が割れやすいですか。+
鋭い内角をもつ高炭素・高焼入れ性の部品です。深い穴のソケットねじ、薄肉ナット、ばね部品。パターンはほぼ常に「形状 + 鋼種に対して速すぎる焼入れ」です。
公開規格と一般的な締結部品冶金学に基づく解説です。記載値は代表的な範囲であり、部品・材質・適用仕様によって変わります。お客様の図面と適用規格が常に優先します。本ページは実部品の破損解析に代わるものではありません。