S45C(AISI 1045)— 調質硬さ、めっき、適用の限界
S45C が焼入れ・焼戻しで実際にできること、断面寸法が結果を決める理由、区分 8.8 に届く条件、そして硬さが ISO 4042 のベーキング対象へ押し上げる場合。
材質データ
| JIS 記号 | S45C |
|---|---|
| 相当材 | AISI 1045 / DIN C45 |
| 炭素量 (%) | 0.42–0.48 |
| 鋼種分類 | 普通炭素鋼 |
| 熱処理ルート | 焼入れ・焼戻し |
| 代表的な表面硬さ (HRC) | 50–58 HRC |
| 実使用で指定される硬さ (HRC) | 40–55 HRC |
| 熱処理で硬化できるか | 可 |
硬さの数値は当社が扱う小物部品における代表的な業界範囲であり、部品形状、断面寸法、焼入れ方法、適用規格によって変わります。保証値ではなく、お客様の図面や規格に代わるものでもありません。
最終確認:
どんな鋼か
S45C は中炭素鋼の主力です。調質できるだけの炭素があり、合金元素の費用は不要です。限界は硬さではなく焼入性にあります。薄い断面は十分に反応しますが、断面が大きくなると芯部の冷却が遅く、均一な部品ではなく硬さの勾配になります。
熱処理の方法
オーステナイト化して焼入れ、その後は図面の要求に合わせて焼戻します。区分 8.8 のボルトは高温焼戻しで軟らかく靭性のある状態に、同じ材質の硬化ワッシャーやピンは低温焼戻しで硬い状態になります。焼入性が浅い鋼なので、S45C の案件で本当に問うべきは「硬さ何点か」ではなく「どの断面で、どの深さまで硬いか」です。
めっきと水素脆性
この材質は ISO 4042 のしきい値をまたいでいます。高温焼戻しの区分 8.8 ボルトはしきい値未満で通常ベーキングしませんが、同じ材質でも約 390 HV を超える硬化ワッシャーやピンとして納入されるならしきい値以上であり、ベーキングすべきです。材質名ではなく図面上の納入硬さで判断してください。
納入区分・硬さによる
ISO 4042 は、電気めっきした締結部品について強度区分 10.9 以上、または約 390 HV(≈ 40 HRC)以上でベーキング(水素除去)を求めています。顧客仕様がより低いしきい値を定める例も多く、判断するのは図面であって本ページではありません。
水素脆性除去ベーキング計画ツール代表的な ISO 898-1 強度区分
選ぶべき場面
小径で区分 8.8 に到達する最も安価なルートとして、また全断面強度より耐摩耗性が重要な硬化ワッシャー、ピン、単純な機械加工部品に選びます。
選ぶべきでない場面
図面が 10.9 や 12.9 を指定する場合は選ばないでください。普通炭素鋼は規格が要求する焼戻しの後に必要な特性を保持できません。断面が厚い場合や芯部硬さの均一性を指定される場合も避けてください。SCM435 や SCM440 はまさにそのために存在します。
この材質で起きやすい不具合
よくあるご質問
S45C で区分 10.9 のボルトは作れますか。+
正直に言えば作れません。ISO 898-1 は 10.9 に対し合金鋼または合金元素を添加した炭素鋼を、最低焼戻し温度以上で調質することを前提としています。普通の S45C はその焼戻し後に特性を保てません。SCM435、SCM440、またはボロン鋼を指定してください。
S45C は水焼入れと油焼入れのどちらですか。+
断面と形状によります。好みではなくトレードオフです。水は焼入性の浅い鋼に必要な冷却速度を与えますが、鋭い角、ねじ部、断面変化部で焼割れの危険が高まります。油は安全側ですが、厚い部品では要求硬さに届かないことがあります。