SK85 / SK5(AISI 1084–1086)— ワッシャーや平ばね部品向け高炭素鋼
ばねワッシャーや平物に対する SK85 の調質・オーステンパー、変形と焼割れが主課題である理由、この硬さの部品に適した表面処理。
材質データ
| JIS 記号 | SK85 (SK5) |
|---|---|
| 相当材 | AISI 1084–1086 / DIN C85 |
| 炭素量 (%) | 0.80–0.90 |
| 鋼種分類 | 工具鋼・高炭素鋼 |
| 熱処理ルート | 焼入れ・焼戻し + オーステンパー |
| 代表的な表面硬さ (HRC) | 58–64 HRC |
| 実使用で指定される硬さ (HRC) | 45–60 HRC |
| 熱処理で硬化できるか | 可 |
硬さの数値は当社が扱う小物部品における代表的な業界範囲であり、部品形状、断面寸法、焼入れ方法、適用規格によって変わります。保証値ではなく、お客様の図面や規格に代わるものでもありません。
最終確認:
どんな鋼か
SK85(今も SK5 と呼ばれます)は高炭素の工具・ばね鋼です。どの締結部品用材質よりも炭素が多く、高い硬さに容易に到達し、その硬さ相応に脆くなります。当社の仕事ではばねワッシャー、緩み止めワッシャー、止め輪、シム、小型の平ばね部品として現れます。
熱処理の方法
焼入れ・焼戻し、またはオーステンパーです。この炭素量では焼入れ組織の応力が非常に大きく、焼戻しは選択肢ではありません。焼戻しが、その部品をばねにするかガラスにするかを決めます。薄い平物ではオーステンパーがよく選ばれます。使える靭性を与えつつ、調質サイクルよりはるかに変形が小さいためです。
めっきと水素脆性
この硬さの部品は ISO 4042 のしきい値以上です。表面処理を選べるなら、リン酸塩+油やジンクフレーク系なら電解由来の水素源を避けられます。図面が電気亜鉛めっきを指定する場合は、速やかなベーキングを工程に組み込んでください。
電気めっき後にベーキングが必要
ISO 4042 は、電気めっきした締結部品について強度区分 10.9 以上、または約 390 HV(≈ 40 HRC)以上でベーキング(水素除去)を求めています。顧客仕様がより低いしきい値を定める例も多く、判断するのは図面であって本ページではありません。
水素脆性除去ベーキング計画ツール代表的な ISO 898-1 強度区分
選ぶべき場面
平ばね部品、ばね・緩み止めワッシャー、止め輪など、硬さ、ばね戻り、耐摩耗性が必要で、断面が焼きの入る薄さである場合に選びます。
選ぶべきでない場面
引張を受けるねじ部品や衝撃を受ける部品には選ばないでください。使用硬さではほとんど延性がありません。変形公差が厳しいのにルートを先に決めていない場合も避け、材質そのものに耐食性は期待しないでください。
この材質で起きやすい不具合
よくあるご質問
薄い SK85 部品が反るのはなぜですか。+
薄い断面は冷却が不均一で、変態自体も体積変化を伴うからです。使える手段は治具、焼入れルート、そして調質の代わりにオーステンパーを使うことです。平物では後から矯正するよりルートを変えるほうが安く済みます。
硬さはいくつに指定すべきですか。+
それは図面の問題で、答えは機能に従います。ばねワッシャーならばね戻りと疲労、止め輪なら耐摩耗性です。上の表は小断面で当社が見る代表的な範囲であり、数値を決めるのは材質ではなく仕様です。