SCM435(34CrMo4 / AISI 4135)— 硬さ、調質、ISO 4042 ベーキング
SCM435 が区分 10.9・12.9 の標準材である理由、最低焼戻し温度が靭性をどう守るか、そして亜鉛めっき後の水素除去ベーキングが選択肢ではない理由。
材質データ
| JIS 記号 | SCM435 |
|---|---|
| 相当材 | AISI 4135 / DIN 34CrMo4 |
| 炭素量 (%) | 0.33–0.38 |
| 鋼種分類 | 合金鋼(Cr / Cr–Mo) |
| 熱処理ルート | 焼入れ・焼戻し |
| 代表的な表面硬さ (HRC) | 48–55 HRC |
| 実使用で指定される硬さ (HRC) | 33–44 HRC |
| 熱処理で硬化できるか | 可 |
硬さの数値は当社が扱う小物部品における代表的な業界範囲であり、部品形状、断面寸法、焼入れ方法、適用規格によって変わります。保証値ではなく、お客様の図面や規格に代わるものでもありません。
最終確認:
どんな鋼か
SCM435 はクロムモリブデン合金鋼で、高張力締結部品の標準的な選択です。クロムが焼入性を与えるためボルトは表面だけでなく断面全体が硬化し、モリブデンが焼戻し軟化抵抗を与えるため、強度区分が要求する高温焼戻しの後も強度を保ちます。
熱処理の方法
通常は油焼入れによる調質です。ISO 898-1 は高い区分に最低焼戻し温度を定めており、10.9 は 425 °C、12.9 は 380 °C です。この下限は完成ボルトの靭性そのものであり、形式的な要求ではありません。焼戻し温度を上げれば硬さは下がります。硬さの数値に合わせるために下限より低く焼き戻すことは、硬さ検査に合格して実機で折れるロットの作り方です。
めっきと水素脆性
水素脆性が実際に問題になるのがこの材質です。区分 10.9・12.9 は ISO 4042 のしきい値以上であり、電気めっき品は必ずベーキングし、めっき後すぐに開始する必要があります。翌直に回したベーキングは効果が大きく落ちます。お客様が認めるなら、無電解のジンクフレーク系はリスクを管理するのではなく水素源そのものをなくす選択肢です。
電気めっき後にベーキングが必要
ISO 4042 は、電気めっきした締結部品について強度区分 10.9 以上、または約 390 HV(≈ 40 HRC)以上でベーキング(水素除去)を求めています。顧客仕様がより低いしきい値を定める例も多く、判断するのは図面であって本ページではありません。
水素脆性除去ベーキング計画ツール選ぶべき場面
図面が 10.9 や 12.9 を指定する場合、キャップスクリューや高張力ボルトが断面全体で均一である必要がある場合、高温焼戻し後も強度を保つ必要がある場合に選びます。
選ぶべきでない場面
図面が 8.8 で足りる場合は選ばないでください。合金分の費用を払い、不要な脆化リスクまで背負うことになります。8.8 ならボロン冷間圧造用鋼のほうが安価です。小径のタッピンねじも対象外で、そこで必要なのは全体硬化ではなく軟らかい芯と硬い表面です。
この材質で起きやすい不具合
よくあるご質問
SCM435 は何 HRC まで硬くなりますか。+
区別すべき数値が二つあり、上の表で分けています。焼入れままで到達できる硬さと、強度区分へ焼き戻した後に実使用で指定される硬さです。図面が引用するのは後者です。いずれも小断面での代表的な範囲であり、部品と仕様によって変わります。
区分 8.8 のボルトは SCM435 と 10B21 のどちらですか。+
冷間圧造できる寸法の 8.8 なら、通常はボロン鋼が技術的にも商業的にも妥当です。SCM435 が価値を持つのは 10.9・12.9 で、そこはボロン鋼の焼入性と焼戻し軟化抵抗が尽きる領域です。
SCM435 のボルトは亜鉛めっき後にベーキングが必要ですか。+
区分 10.9・12.9 では必要です。ISO 4042 のしきい値以上だからです。条件とめっきからベーキングまでの最大許容時間は適用仕様が定めます。当社は水素除去ベーキングを社内で行い、時間と温度を記録しています。