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鋼種ガイド

S20C(AISI 1020)— 浸炭、硬さ、小物部品のめっき

S20C が全体焼入れではなく浸炭される理由、表面硬化層が芯部にできないことをどう補うか、そして表面硬化ねじが亜鉛めっき後も ISO 4042 のベーキング対象になる理由。

材質データ

S20C — 材質データ
JIS 記号S20C
相当材AISI 1020 / DIN C22
炭素量 (%)0.18–0.23
鋼種分類普通炭素鋼
熱処理ルート浸炭(表面硬化)
代表的な表面硬さ (HRC)55–62 HRC
実使用で指定される硬さ (HRC)55–60 HRC
熱処理で硬化できるか

硬さの数値は当社が扱う小物部品における代表的な業界範囲であり、部品形状、断面寸法、焼入れ方法、適用規格によって変わります。保証値ではなく、お客様の図面や規格に代わるものでもありません。

最終確認:

どんな鋼か

S20C は普通低炭素鋼です。焼入れだけでは有効なマルテンサイトを作るには炭素が足りず、まず表面に炭素を入れる浸炭用の材質です。その代わり安価で冷間圧造性に優れ、圧造が安定するため、多くのタッピンねじやピンは S20C 線材から始まります。

熱処理の方法

ルートは浸炭後の焼入れ・焼戻しです。浸炭温度で炭素が表層に拡散し、焼入れで炭素の入った表層がマルテンサイトになり、低炭素の芯部は靭性を保ちます。有効硬化層深さは図面で指定され ISO 2639 で測定するもので、工場が勝手に決める値ではありません。全体焼入れはこの材質では成立しません。硬化させる炭素がないからです。

めっきと水素脆性

芯部が軟らかくても表面硬化層は ISO 4042 のしきい値を大きく超えるため、電気めっきした表面硬化ねじは通常ベーキングし、めっき後できるだけ早く開始します。お客様が無電解仕上げを認める場合、ジンクフレークなら酸洗と電解という水素源そのものをなくせます。

ISO 4042 ベーキング(水素除去)

電気めっき後にベーキングが必要

ISO 4042 は、電気めっきした締結部品について強度区分 10.9 以上、または約 390 HV(≈ 40 HRC)以上でベーキング(水素除去)を求めています。顧客仕様がより低いしきい値を定める例も多く、判断するのは図面であって本ページではありません。

水素脆性除去ベーキング計画ツール

代表的な ISO 898-1 強度区分

該当なし

選ぶべき場面

安価で冷間圧造しやすい鋼に、耐摩耗性とねじ立て性のある硬い表面が必要で、荷重は靭性のある芯部が受け持つ場合に選びます。タッピンねじ、打込みねじ、小ピン、クリップなどです。

選ぶべきでない場面

図面が 8.8 や 10.9 のような全断面の強度区分を要求する場合は選ばないでください。浸炭 S20C は表面硬さはあっても全体強度がなく、調質材が正解です。焼入れ後に切削する部品も不向きで、硬化層を削り落としてしまいます。

この材質で対応している部品

この材質で起きやすい不具合

よくあるご質問

S20C は全体焼入れできますか。+

できません。炭素量が低く焼入れ性が不足するため、浸炭または浸炭窒化で先に炭素を入れる必要があります。「全体焼入れした S20C ボルト」を提示されたら、芯部硬さをどこで測った値か確認してください。

表面硬化した S20C ねじは亜鉛めっき後にベーキングが必要ですか。+

通常は必要です。芯部はしきい値未満でも表面は ISO 4042 のしきい値を超えており、表面硬化ねじは遅れ破壊の代表的な母集団です。図面に従い、めっき後できるだけ早くベーキングしてください。

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