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規格リファレンス

DIN 50938 — 鉄鋼部品の黒染め(Brünieren):あの黒い層の正体

DIN 50938 の黒染めで実際に何ができるのか。鋼から育つ四三酸化鉄の皮膜、その実際の膜厚、どこまで錆を防ぎどこから防がないか、なぜ防錆油やワックスによる封孔処理が続くのか、そして図面での指定方法。

DIN 50938
関連サービスリン酸塩皮膜処理
リン酸塩化成皮膜DIN 50938
別の表記Brünieren (black oxide, blackening, bluing), ISO 11408 (black oxide coating on iron and steel), MIL-DTL-13924 (US counterpart; formerly MIL-C-13924), AMS 2485 (aerospace black oxide), Fe3O4 conversion coating, รมดำ / ชุบดำ · 发黑 · 發黑 · 黒染め(四三酸化鉄被膜) · 흑착색 / 사삼산화철피막
更新

適用範囲 — および対象外の事項

DIN 50938 は鉄鋼材料の部品に対する黒染め(Brünieren)についてのドイツ規格で、処理そのものと結果の調べ方を扱います。すなわち、浴が表面に何をするのか、仕上がりをどう判定するのか、そしてこの仕上げが依存する後処理です。一方で、耐食寿命や塩水噴霧時間を与えることはなく、この皮膜を電気亜鉛めっきの代替にするものでもなく、オーステナイト系ステンレス(黒くするなら別の化学系が要ります)を対象にせず、下にあるねじの機械的性質・ねじ公差・寸法規格にも触れません。

規格は著作権のある文書です。当社は範囲・意図・実務上の適用を自らの言葉で説明しています。最新版は ISO、ASTM、DIN または各国の規格機関から入手してください。

生産で実際に効いてくる条項

  • 1黒いのは部品に足したものではなく、部品そのものです。浴が最表面の鉄を四三酸化鉄 Fe3O4 に変えるだけで、陽極も陰極も、析出した金属もありません。だからこれはめっき層ではなく化成皮膜と呼ばれ、だから剥がれたり浮いたりする「層」がそもそも存在しません。
  • 2皮膜は素地から育ち、素地を少し食べて成長するため、厚さは 1 µm 前後の桁にとどまり、外径の実質変化は無視できます。処理前にゲージを通ったねじは、処理後も通ります。強度区分 12.9 の六角穴付きボルトが電気めっきではなく黒染めで供給されるのは、見た目ではなくこの理由です。
  • 3素の黒染めは防錆システムではありません。皮膜は薄く、遮断層というより防錆油の担い手として働きます。乾いたまま置けば錆びますし、油やワックスで封じれば、控えめではありますが正直に仕事をします。黒い表面について語られる塩水噴霧の数字は、酸化皮膜ではなく封孔処理の数字です。
  • 4したがって封孔処理は仕様の一部であって、最後のおまけではありません。防錆油、ワックス、乾燥性防錆剤は下工程での振る舞いが違います。油はねじ用接着剤や塗装と喧嘩し、ワックスは締付トルクを計算した前提の摩擦係数を変え、封じずに出荷された部品は組み付けられる前に箱の中で錆びることがあります。
  • 5めっき電流がないということは、陰極側で発生した水素が鋼に入る経路がないということで、高強度部品で電気めっきを判断事項にしている主要な機構が外れます。ただし浴の前段にある酸洗まで消えるわけではないので、非常に硬い部品に強い酸洗が必要な場合は、受注前に一度話す価値があります。
  • 6皮膜の均一さは、その下の鋼の均一さを超えません。色と濃さは合金成分、炭素量、表面粗さ、残っているスケールに従うため、鍛造肌と切削肌が混ざったロットや、同じ鋼種でも溶解ロットが違うものが混ざれば、規格に完全に適合していても二色に見えることがあります。焼結品など多孔質の部品は、孔に浴の成分を抱え込み、数週間後に錆としてにじみ出します。

参照表

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黒染めの数値 — リン酸塩皮膜の数値を隣に並べて

黒染めの数値 — リン酸塩皮膜の数値を隣に並べて
項目一般的な値
この黒い層の正体Fe3O4 (magnetite)
一般的な皮膜厚さ≈ 0.5–2 µm
外径寸法の一般的な変化量< 1 µm
アルカリ高温黒染め槽の一般的な温度≈ 135–150 °C
この処理が使う電流
規格が素の皮膜に与えている塩水噴霧寿命
リン酸塩皮膜の一般的な厚さ(対比用)≈ 2–25 µm
リン酸塩皮膜の一般的な皮膜量(亜鉛系 · マンガン系、対比用)1.5–4.5 g/m² · 7.5–30 g/m²

鋼種、表面状態、適用仕様によって変わる業界一般値であり、保証値ではありません。二か所のダッシュは文字どおりの意味です。黒染めは電流を一切使わず、規格は素の黒染め皮膜に耐食寿命を与えていません。黒い表面について語られる塩水噴霧時間は、その上の防錆油やワックスの性能であり、別項目として取り決める必要があります。

本ページの数値は、部品・皮膜システム・適用仕様に依存する代表的な業界値であり、保証値ではありません。必ず有効版と客先図面で確認してください。本ページはそのいずれにも代わりません。

図面・注文書に書くべきこと

  • 処理名と適用文書を同じ行に書きます。「黒染め(Brünieren)DIN 50938 による」あるいは客先の同等文書、図面が変更管理下にあるなら適用版も。
  • 後処理を名指しします。防錆油、ワックス、乾燥性防錆剤のいずれか。組立が敏感なら種類まで。「黒染め」だけでは、納入品の防錆挙動が定義されていないのと同じです。
  • 部品がこの後どうなるかを書きます。塗装、接着、ねじ用接着剤、あるいはトルク管理の締結。いずれも封孔処理の選択肢を最低ひとつ消しますし、カゴに入れる前に分かっている方がはるかに安くつきます。
  • 素材と状態を書きます。鋼種、すでに焼入焼戻しや浸炭焼入れが済んでいるか、ロットにステンレス・鋳物・焼結品が混じっていないか。オーステナイト系ステンレスは鉄用の黒染め浴では黒くなりません。
  • 外観の受入方法を決めます。限度見本を使うか、面の違いや溶解ロットの違いによる色差は不良としない旨を書面にするか。黒染めのロットが最後に揉めるのは色であり、それは見積の段階で決まるか、まったく決まらないかのどちらかです。

引用が曖昧なときに起きること

  • 本当に必要だったのが電気亜鉛めっきなのに、黒染めで発注してしまうこと。両者は防錆の桁が違い、屋外や洗浄のある環境では、どれだけ油を塗ってもその差は埋まりません。
  • 規格が定めているかのように、黒染めに塩水噴霧時間を書き添えること。規格は定めていません。時間を取り決めるなら、それは防錆油やワックスの指標であり、独立した行として試験の根拠とともに書く必要があります。
  • 後で接着・塗装・ねじ用接着剤を使う部品を、そう伝えずに黒染めすること。黒染めを実用にしているその油が、まさに接着剤や下塗りを効かなくしている当のものです。
  • 「黒染め」「黒リン酸塩皮膜」「黒亜鉛めっき」を注文書上で同じ品目として扱うこと。三つは別の表面、別の厚さ、別の壊れ方、別の価格であり、Fe3O4 なのはそのうちひとつだけです。

よくあるご質問

黒染めは錆びませんか+

皮膜だけでは、ほとんど防げません。防げると言う人は酸化皮膜ではなく油の話をしています。四三酸化鉄の皮膜は 1 µm 前後の桁しかなく、鋼面を封じるのではなく防錆剤を保持するのが役目です。油やワックスで封じ、屋内で使う限りは、取り扱い・保管・外観という役目を十分に果たします。ただし雨、洗浄、塩分に当たる部品なら、正直な答えは電気亜鉛めっきです。最初のクレームの後ではなく、見積の段階でそう申し上げます。

黒染めとリン酸塩皮膜(黒)は同じものですか+

違います。黒染めは鋼から育った鉄の酸化物で、通常は数 µm よりずっと薄いものです。リン酸塩皮膜は表面に生成する結晶質の層で、数 µm あり、油を保持し、塗装下地となり、なじみを助けるために意図的に多孔質です。袋の中では似て見えても、部品の上では別物です。図面が求めているのが保油・塗装下地・かじり防止ならリン酸塩皮膜、ねじの嵌合に触れずに黒くしたいのなら黒染めです。当社は両方を運用しているので、どちらかへ誘導する理由がありません。

黒染めでねじの嵌合や穴径は変わりますか+

実用上は変わりません。それこそが黒染めを選ぶ主たる工学的理由です。皮膜は 1 µm 前後の桁で、しかも消費した金属の中へ一部育つため、処理前に通ったゲージは処理後も通るのが普通です。電気亜鉛めっきは逆で、フランクごとに厚みが乗ります。めっきねじに ISO 4042 の考え方による寸法の余裕が要るのはそのためです。表面処理後に厳しい等級でゲージ検査をする部品なら、注文時にその旨をお書きください。初品で確認してお見せします。

本ページの数値は、部品・皮膜システム・適用仕様に依存する代表的な業界値であり、保証値ではありません。必ず有効版と客先図面で確認してください。本ページはそのいずれにも代わりません。

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図面をお送りください。本規格と突き合わせて確認します

現状の図面または仕様の記載、強度区分やめっき要求、ねじ寸法と公差域、可能であれば実物をお送りください。記載どおりに加工できる項目、そのねじでは計算上成立しない項目、そして要求が見積・検査・説明可能になるために追記が必要な項目をお伝えします。

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