
そのまま使える一行の指定例
全体焼入れ例: SCM435 ピン — 焼入れ焼戻しで 40–45 HRC、ISO 6508(HRC) により円筒面で測定、振れ/TIR≤0.05 mm、表面に完全脱炭なし、ロットトレース付き硬さ証明書。
表面硬化例: SCM415 ピン — 浸炭/浸炭窒化で表面 58–63 HRC、有効硬化層深さ(CHD) 0.30–0.50 mm(550 HV1、ISO 18203)、芯部 30–40 HRC。
1)「焼入れ」ではなく硬さ「範囲」を指定
常に範囲で指定します(例:40–45 HRC または 550–620 HV)。単一値は非現実的な精度を要求します。硬さは位置間・個体間で自然にばらつくためです。±2–3 HRC 程度が再現可能で、より狭い場合は事前協議します。
2) 測定位置と方法を明記
硬さは位置で変わります(表面・表層下・芯部)。図面に測定点を示し、方法/規格を明記します(HRC は ISO 6508、HV は ISO 6507)。標尺間換算(ISO 18265)は近似で、HRC 指定ならできる限り HRC を直接測定します。
薄小物では HRC が突き抜けたり砧効果で低く出るため、断面で HV を指定します。
3) 表面硬化:硬化層深さを正しく定義
浸炭/浸炭窒化/高周波では有効硬化層深さを指定します。現行法は ISO 18203:2016(ISO 2639:2002 を置換)。CHD は 550 HV1、NHD は芯部硬さ+50 HV、SHD は最小表面硬さの 80% まで測定。「CHD 0.3–0.5 mm、550 HV1」のように深さ範囲・限界硬さ・荷重を示します。
4) 変形・脱炭の限度
焼入れは必ず応力と変形を生み、細長物ほど顕著です。検証可能な限度(振れ/TIR、真直度、平面度、ねじゲージ)を定め、公差が厳しい場合は研削代を残します。脱炭は表面を軟化させ疲労寿命を下げます。ファスナーは ISO 898-1 が脱炭限度(未影響部高さ E、完全脱炭最大深さ G)を規定するため、「表面損傷なし」ではなくこれらの限度を引用します。
5) 熱処理側へ渡す情報
図面/写真、材料、用途、硬さ範囲と標尺、測定位置、層深とその定義、変形限度、脱炭要求、ロット重量/数量、必要書類。ボルトで強度区分を引用する場合は ISO 898-1 に紐付けます。サイトの仕様作成ツールで項目を漏れなく確認できます。
よくある質問
「45 HRC に焼入れ」だけで十分ですか?+
範囲(例:43–47 HRC)と測定位置・方法/標尺を示してください。硬さは自然にばらつき、単一値では受入れが困難です。
仕様は HRC と HV どちら?+
HRC は厚い断面、HV は薄い表面・硬化層・微小部品向けです。標尺間換算は近似のため、可能なら指定標尺で測定します。
硬化層深さの書き方は?+
深さ範囲・限界硬さ・荷重を示します。例:ISO 18203 による CHD 0.3–0.5 mm、550 HV1。単に「表面硬」ではありません。



