
なぜばねはねじと熱処理が違うのか
ばねは単に「硬い」だけでなく、高い弾性限が必要です。圧縮・引張後に完全に元へ戻り、数百万回の繰返しでも疲労せず、へたり(永久変形)を起こさないことが求められます。
ねじのように硬くしすぎるともろく折れ、軟らかすぎるとへたって戻らなくなります。仕事の核心は硬さと弾性のバランスを取ることです。
そのためばね鋼とばね熱処理工程は専用に設計され、一般のねじ・ナット・ボルトとは異なります。
よく使うばね鋼の鋼種
ばね鋼は高炭素で、疲労に強い合金元素を含むことが多いです。
- SUP9 / SUP10(Cr / Cr-V系) — JIS標準のばね鋼。コイルばね・板ばね向けで疲労寿命が良好。
- SUP6 / SUP7(Si-Mn) — 重荷重・高負荷ばね。
- SK5 / SK85(炭素鋼) — 板ばね、クリップ、ばね座金。
- 65Mn — 経済的で広く使われるばね鋼。
- オイルテンパー線 / ピアノ線 — 製鋼メーカーから硬化状態で供給。成形後は応力除去のみ。
ばねの2つの熱処理ルート
ばね加工は素材により2ルートに分かれます。
- ルート1 — 軟らかい状態で成形後に焼入れ: 焼なまし状態で成形したSUP・SK5・65Mnに用い、焼入れ(オーステナイト化 → 急冷)後に焼戻しして必要な弾性を得ます。
- ルート2 — 硬い線で成形後に応力除去: オイルテンパー線やピアノ線は既に硬いため、コイリング後に約230〜400℃で応力除去(ストレスリリーフ)のみを行い、形状を保持し成形応力を除きます。
ルートは素材とばね設計で決まります。線材の鋼種と成形方法をお知らせいただくと、正しい工程を設定できます。
焼戻し温度が戻り(ばね性)を決める
完全焼入れしたばねの焼戻しは通常350〜450℃程度と、一般の耐摩耗部品より高めです。目的が最高硬度ではなく最高の弾性限だからです。
焼戻しが低すぎる → 硬いがもろく破損リスク。高すぎる → 靭性は増すがへたる(戻りを失う)。いずれも規格外になります。
ばねの一般的な使用硬さは種類・用途により約42〜52HRCです。
ばねの敵:脱炭と疲労
ばねの早期破損で最も多い原因が脱炭です。加熱時に炉の雰囲気が制御されないと表面の炭素が失われて軟化し、表面に亀裂の起点ができます。中心部が健全でも、ばねは早期に疲労破断します。
そのためばねは脱炭を防ぐ雰囲気制御炉で熱処理する必要があります。
その他の重要点:疲労起点となる深い傷のない滑らかな表面、そして図面のばね定数・荷重を満たすための変形(ひずみ)制御です。
当社が対応するばね加工
V.S. Heat Treatment は雰囲気制御炉でばね・ばね鋼部品を大量に処理します。
- ばね鋼(SUP/SK5/65Mn)の焼入れ+焼戻しを、図面の硬さと弾性に合わせて実施。
- オイルテンパー線/ピアノ線から成形したばねの応力除去。
- 脱炭を防ぐ雰囲気制御に加え、全ロットで硬さ測定と検査証明書。
ばねの図面、材料鋼種、目標硬さ/荷重をお送りいただければ、24営業時間以内に最適な工程とお見積りをご提案します。
よくある質問
ばねは何HRCに処理しますか?+
種類と用途によりますが、ばねは概ね42〜52HRCで使用し、最高硬度より弾性限を重視します。
オイルテンパーばね線は再焼入れが必要ですか?+
不要です。硬化状態で供給されます。コイリング後は形状保持と成形応力低減のため応力除去のみ行います。
中心部は健全なのに、なぜばねは表面から折れるのですか?+
多くは表面の脱炭や傷が疲労起点になるためです。雰囲気制御熱処理と清浄な表面で対策します。
ばね加工の見積りはどう依頼しますか?+
図面、ばね鋼の鋼種、目標硬さ/荷重をお送りください。評価のうえ24営業時間以内にお見積りします。



