熱処理工程比較
浸炭焼入れ vs ズブ焼入れ:ねじ・ボルトはどちら?
当社メッシュベルト炉の二大工程です。最高硬さではなく、部品の役割で選びます。
Case hardening vs Through hardening
要点:タッピンねじは浸炭、8.8/10.9 ボルトはズブ焼入れ(調質)
浸炭焼入れは低炭素鋼の表面に炭素を拡散させてから焼入れし、表面約 550–700 HV の硬い殻と折れにくい靭性のある心部を得ます——鋼板にねじを切るタッピン・ドリルねじ向き。ズブ焼入れ(調質)は中炭素鋼・合金鋼を断面全体で均一に硬化させ、ボルトが 8.8、10.9、12.9 の強度区分に到達する方法です。
浸炭焼入れとズブ焼入れの比較
| 項目 | 浸炭焼入れ | ズブ焼入れ(調質) |
|---|---|---|
| 原理 | 表面に浸炭(約 850–940°C)後、焼入れ | 全体を加熱し焼入れ+焼戻し |
| 材料 | 低炭素鋼:SWCH10A–22A(C ≤ 約 0.25%) | 中炭素・合金鋼:S45C、SCM435、SCM440 |
| 表面硬さ | 約 550–700 HV(約 52–60 HRC) | 区分による(例 22–39 HRC) |
| 心部硬さ | 表面よりかなり軟らかい——靭性大 | 表面に近い——断面全体で均一 |
| 指定すべき項目 | 硬化層深さ+表面+心部硬さ | 硬さ範囲/強度区分+測定位置 |
| 主な規格 | ISO 2702(タッピンねじの熱処理) | ISO 898-1(ボルト強度区分) |
| 代表部品 | タッピン・ドリル・石膏ボードねじ、座金 | 8.8–12.9 ボルト・ナット、ピン |
| 強み | 耐摩耗の殻+耐衝撃の心部 | 断面全体で区分どおりの引張強さ |
選び方
Case hardening
低炭素鋼成形品で「表面の硬さ」が仕事のとき(鋼板へのねじ切り、表面摩耗対策)は浸炭焼入れ。心部は折れない靭性を保ちます。
Through hardening
断面全体で強度区分どおりの引張・せん断荷重を受ける部品(8.8 以上のボルト、均一硬さ指定品)はズブ焼入れ。
図面指定前の注意
- 低炭素鋼はズブ焼入れ不可、高炭素鋼は浸炭不適——材料と工程は対で決まります。
- 小ねじの硬化層は数十〜数百 µm。焼入れ後の研削で層が消えることがあります。
- HV/HRC 範囲はメッシュベルト炉小物の目安で保証値ではありません。試験で検証を。
- 焼入れ品の亜鉛めっきは水素脆化を評価し、区分に応じてベーキングします。
発注時に送る情報
- 1部品種類、材質、ミルシート
- 2参照規格:ISO 2702 / ISO 898-1
- 3表面硬さと硬化層深さ(浸炭)または硬さ範囲/区分(調質)
- 4測定位置と方法(HV/HRC)
- 5ロット量と後工程の表面処理
よくある質問
タッピンねじにはどちらの工程を使いますか?
浸炭焼入れ(表面硬化)です。低炭素のねじは鋼板にねじを切れる硬い表面が得られ、心部は靭性を保ちます。ズブ焼入れは断面全体の強度が必要な中炭素・合金鋼のボルト向けです。
どんな鋼でもズブ焼入れできますか?
いいえ。低炭素鋼はズブ焼入れできず、高炭素鋼は浸炭に不向きです——材料と工程は対で決まります。鋼種をお送りいただければ適切な方法を確認します。