
なぜめっきがねじに影響するのか
ねじは公差の非常に厳しい形状で、めっき(亜鉛・リン酸・黒染め)はあらゆる面に金属/皮膜の層を加えます。ねじ山の側面も含みます。
山の両側が厚くなると、おねじ(ボルト)とめねじ(ナット)の隙間が狭くなります。逃がしが足りないとナットが固着・入り始めず、逆に大きく削ってから薄くめっきするとねじが緩くなります。
したがってめっきねじ部品では、「皮膜厚」は防錆だけでなく組立の問題でもあります。
重要則:皮膜は厚さの約4倍のねじ公差を消費する
技術者が覚えるべき則は、厚さtの皮膜は、組立可能な有効径(ピッチ径)を約4×t減少させることです。
皮膜が山の両側面に付き、ねじ形状によりピッチ径への影響が実厚の約4倍に拡大するためです。
例:8ミクロン(µm)の亜鉛皮膜は、ピッチ径公差を約32µm消費します。小径ねじ(M3〜M6)では、逃がしをしなければ組立不能になるほどの割合です。
めっき後に組めるよう公差を逃がす方法
実務では標準的な対処があります。
- ボルト(おねじ): 皮膜の余地を残すため、ねじを6g級(わずかな下振り逃がし)で加工。
- ナット(めねじ): めっき前にオーバーサイズでタップ(例:6AZ級)し、めっき後も6Hを満たしてボルトと嵌合させる。
- 皮膜厚を管理し、防錆に足りつつ組立可能な範囲に。ねじを固着させるほど厚くしない。
発注時に指定すべき事項:目標皮膜厚、ねじ等級、相手部品(ボルト・ナット両方めっきか)。これで正しく設定できます。
めっきはトルクと軸力を変える(トルク—テンション)
めっきは寸法だけでなくねじの摩擦係数も変え、締付けトルクと実際の軸力(クランプ荷重)の関係を変えます。
無処理の亜鉛は摩擦が高め・不安定になりがちなため、上塗り/潤滑を加えて摩擦を安定・予測可能にし、所定トルクで狙いの軸力が出るようにします。
軸力を厳密に管理する部品(自動車部品など)では、必要な摩擦係数や皮膜システムも併せて指定してください。
忘れずに:高強度部品は水素焼き(ベーキング)が必要
高強度のねじ・ボルト(10.9、12.9級、または≥320HV/約32HRC)では、電気亜鉛めっきが鋼中に水素を取り込み、水素脆化のリスクがあります。
そのため規格に従い、めっき後の規定時間内に約200℃で水素除去ベーキングを行う必要があります。
詳細は水素脆化ベーキングの専用記事をご覧ください。高強度ねじ部品では省けない工程です。
組立可能なよう厚みを管理します
V.S. Heat Treatment はねじ部品を大量にめっきし、実際に組めるよう管理します。
- 防錆仕様に合わせた皮膜厚管理(ねじ公差への影響を考慮)。
- ボルト・ナット組のための逃がし/オーバーサイズタップの助言。
- 高強度ねじ部品の水素除去ベーキング、膜厚測定と検査証明書。
ねじ等級、目標皮膜厚、相手部品をお送りいただければ、ちょうど嵌合するよう工程を設定し、24営業時間以内にお見積りします。
よくある質問
亜鉛は何µmまでならナットが回りますか?+
ねじ等級と寸法によります。皮膜はピッチ径公差を約4倍消費する(例:8µmで約32µm)ことを踏まえ、逃がしやオーバーサイズタップをねじ寸法に合わせます。
めっき後にナットが入らないのはなぜ?+
多くは皮膜が厚すぎるか、めっき前に逃がしをしていないためです。ナットのオーバーサイズタップ/ボルトの6g加工と皮膜厚管理で解決します。
めっきは締付けトルクに影響しますか?+
します。ねじ摩擦が変わるため、上塗り/潤滑を加えて摩擦を安定させ、所定トルクで狙いの軸力を出します。
めっきねじの相談と見積りはどうすれば?+
ねじ等級、目標皮膜厚、相手部品をお送りください。適切な逃がしを提案し、24営業時間以内にお見積りします。



